bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  ロマンスのR / スー・グラフトン  

ロマンスのR (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ロマンスのR (ハヤカワ・ノヴェルズ)

富豪ラファティからの依頼は簡単なものだった。甘やかされて育った一人娘のリーバが、横領の罪で服役していた刑務所から出所するので、迎えに行って自宅に送り届けて欲しいというのだ。出所したリーバは、なるほど30歳にもなるのに気まぐれなわがまま娘だが、友人も無くキンジーに心を開き、あれこれ頼ってくる。
だが次第に、リーバは実は元の雇い主で有名実業家ベックの愛人であり、彼の裏の仕事、マネーロンダリングに関わっていた事が解ってくる。ベックを摘発したい市警やFBI国税局等の合同チームが、情報提供者としてリーバに目を付け近付いてくるが、リーバは相変わらずの身勝手ぶりで本意が知れない。簡単だと思っていた仕事が思わぬ大事になり、間に立たされたキンジーも振り回され、事態は思わぬ方向へ・・・・・。
カリフォルニアの女探偵キンジー・ミルホーン・シリーズ、第18作。


以下、ネタバレを含みます。

ベックの愛人であり、彼の罪を肩代わりする形で刑に服したリーバ。ぶっちゃけ利用されたんですけれど、出所した時点ではまだ彼を愛し信じちゃってます。リーバの後釜に座った新愛人の証拠写真(よりにもよってリーバの親友!)を突きつけられてもまだスッキリしない。ところがデート現場に踏み込んで(元)親友にツンケンされたり、ベック一人で行くと言っていた出張に、冷え切っていると言い聞かせられていた奥さんを同行して行く現場を目撃したりして、ようやく心が動きます。ところがこのリーバって女性は、賢いんだか無邪気なんだか、とんでもなくイカレてます。当局との話がつく前に、ベックの会社に平気で不法侵入してくれたり何だりして、キンジーの立場をも危うくさせてくれちゃいます。復讐?彼女はもともとギャンブル狂いで病的にスリル大好きのようですね。育ち方のせいか、大人の常識が通用しません。彼女なりの計算はものすごく働いてるんですけど。勝手な行動(しかも違法)の連続で今回はホントにキンジーが振り回されてしまって大変ですよ。
さて、タイトルにもなっている「ロマンス」ですが、原題にはありません。日本版のタイトルを付けるにあたって、訳者さん編集者さん、考えたんでしょうねえ。この作品には確かに、今までに無く複雑なロマンスが幾つも描かれています。

  • リーバの人生を変えたベックとのロマンス。
  • キンジーとチーニー警部補の新しいロマンス。
  • キンジーの大家さんヘンリーとマティの老いらくのロマンス。

どれもこれも一筋縄ではいきません。つか、恋ってなかなか上手く行かないもんですよねー。ねー。