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bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

取れかけ釦の逃避

 

取れかけた釦を気にしながら

柔らかいものはみな揮発してしまう

横になって手足を緩く伸ばし

地べたの気持ちを測ってみる

木の影は長く角度を変えてくるから

もうすぐにでも地べたと木の影に挟まれて

無に近しい薄さで無に等しい存在で

無とは何だったかを思い出そうとする

なつかしい

見たことも聞いたこともない何か

帰りたい気持ちはどこへも流れない

漂い 包み 染み入り

地べたとわたしと木の影の三層を綴じようとする

辛うじて思い出したのは釦付けの仕方

無になることを拒否するために

地べたと木の影を縫い込まぬように

真ん中の層を広げて折り畳み

大事に鞄に仕舞い込む

はてどこへ帰ればよかったのか

はてどちらに向かえばよかったのか

いろいろなものが暮れようとするこのとき

無に追い付かれてはまずかろう

来年がすぐそこ タバコ屋の角まで来ているこのとき

スパイ入門に書かれた通り後ろ向きに足跡をつけ

胸の前で取れかけた釦をおさえながら

わたしは確かに帰ろうとしていた

ただちょっと間違っただけだった