6月の無題
思い出せませんごめんなさい
貝殻みたいに閉じて眠りたいです
その時が来たらわかるでしょうか
最後の一人に残されませんように
まだ歩きなれてない靴でこんなにも歩いてしまった
道が合ってるかどうかなんて考えもしないで
むかし何かがあった空き地で途方に暮れていました
もういいんじゃないかなって
そんな気がしてふと見渡してみると
ここちよい広さと雑草の茂り具合まるで
わたしのために残されていたようなのです
ポケットに煙草は最後の一本で燐寸も最後の一本で
もちろん点けて吸いました
耳鳴りが晴れたような気持でした
ああ耳鳴りがしていたのでしたね忘れていました
もういいんじゃないかなって
自分で言ってみました自分の内側にね
煙草の煙のようにくるくると渦巻いて
子供時代が遠ざかるのを知りました
戻れないことが漸く理解できました
あれらはドライアイスで出来ていたので
放れながらそのまま気化してしまうのです
歩く必要がなくなったようです
ここがどこなのか知る必要がなくなったようです
ここで間違ってなかったみたいです
地べたに座ると草花に埋もれて小鳥の声が聞こえます
きょうも夜は来るのでしょういつもいつもそうだったように
まだ覚えている色々な欠片はそのまま化石になりますか
なくしかたがわからなくてね 必要なものは既にないのに
煙草の箱をポケットに潰して忘れたことを忘れてしまって
閉じかたを思い出します貝殻の閉じかた石の閉じかた
閉じてしまえば大丈夫なはずですたとえ今日が日曜日でも
遠く子供たちの声がします
あれは私ではありませんあの中に私はいません
そう思うとちょっと笑える気がします
もういいんじゃないかな