おとうと
弟の誕生日。おめでとう。
彼を思い出そうとすると半ズボン（ハーフパンツではない。昭和だぜ）で学校指定のリュック（ランドセル的な扱い）背負って校章のついた黄色い帽子をかぶった姿が浮かんでしまう。実際の彼は四十半ばのオッサンになっているのだが。二児の父で上の子は中学生だ。そこそこ有名な会社に勤め、そこそこの役職についている。もうりっぱな大人なのだ。
そんなわけだから偶に葬式や法事で顔を合わせるとギョッとする。うわーオッサンになってる。当然だ姉であるこちらはオバサン街道まっしぐらなんだもの。オレうっかりすると孫がいても可笑しくない歳だぜ。
私は高校を出てすぐ実家を離れた。彼は中学に入ったばかりだったか。彼の思春期を知らない。成長する姿を見てこなかったので記憶の中の彼はいつも不貞腐れた小学生だ。彼の最初のガールフレンドを知らない。その次のガールフレンドも、その後のガールフレンド達も見たことがない。（母経由で噂は聞いていたが。）
彼のガールフレンドに会ったのは彼らの結婚式の前日だった。離れた地域に住んでいたので家族の顔合わせにも参加していなかった私は、結婚式で九州に行ったその日、翌日ウエディングドレスを着ることになっている彼女に初対面となったのだった。丸っこくてよく笑う彼女は見た目よりしっかりしていて、あの小さかった弟がなかなかやるなと思ったものだった。
それから何年だ？十五年？もっとか？まあ色々あっただろうけれどあれやこれやで今日に至るのだな。そりゃ歳も取るわな。お互い様だな。
昔々ちびっ子だった今は百八十センチ越えのハヤトクンお誕生日オメデトウ。家庭も仕事も充実してるかな。だといいな。これからも色々あるだろうけど元気でいてくれ。うん、おめでとう。
