bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

 黒い犬 / スティーヴン・ブース

黒い犬 (創元推理文庫)
舞台は英国ピーク地方の閉鎖的な田舎町。犬を散歩させていた老人が少女の他殺死体を発見した。被害者ローラは他所から越して来た実業家の娘だったが、、捜査が進むうちに家族の語る姿とは別の一面を持っていたことがわかって来る。
この捜査に、地元出身の刑事クーパーと、都会から赴任してきた女性刑事フライが加わるが、まるでタイプが異なる上に昇進を巡ってのライバルでもありお互い心中穏やかではなかった。対立しながらも協力しつつ捜査を進めていくうちに、傍目には平凡に見える人々の持つ静かな、その分根深く重い苦悩が明らかにされていくのだった。


いかにも英国製ミステリという味わい。荒れ野に点在する農場の風景、旧弊な住人たちは余所者になかなか心を開かず、刑事たちはひたすら地道な捜査に励む。主人公となるクーパーとフライの二人も、それぞれが重苦しい事情を抱えており、お互いはそれを知らずにいる。二人とも若い刑事で自分の事で一杯一杯のようだ。まだ問題山積みなんだけど、クーパー&フライ・シリーズの第一作であり、二人の関係も始まったばかりだから次作以降でどう変わってくるのか楽しみにしておこうか。
蛇足だが(もしかするとネタバレかもだが)、巻末の訳者あとがきに作者のこんなひとことが。「イギリスでは、行方不明者の遺体が”犬を散歩させる老人”によって発見される事が多いのに気がついて、この小説を思いついた」ナルホド(笑)。