bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  カットアウト(上下) / フランシーヌ・マシューズ

カットアウト〈上〉 (新潮文庫) カットアウト〈下〉 (新潮文庫)  
ベルリンで大規模な爆破テロが起こり、合衆国の女性副大統領が誘拐されれた。その瞬間を捉えたニュース映像に映っていた姿は、旅客機爆破テロで死んだはずのCIA工作員エリックのそれであった。しかも犯行グループ『四月三十日』のメンバーとして。彼等は副大統領に炭素菌を注射し、合衆国を脅迫する犯行声明を送り付ける。エリックの妻であり、自身も情報分析官としてCIAで働くキャロラインは、様々な思いを胸にヨーロッパに飛び捜査を開始する。


おもしろい! 民族の対立、バイオ・テロ。テロとアメリカの正義、まさにイマ風の小説とおもったら、本国では2001年の1月に出版されたものだそうな。作者は元CIAの分析官で、そこでの経験をベースに(出版前に、機密に類する事項がないかチェックがあったそうですよ)書かれた作品なのだった。例の事件よりずっと前から、こういった事は懸念されていたわけですね。一般が知らされてないだけで。
もう一つ、この作品の凄い所は、主人公をはじめ主要登場人物に女性を配したところか。しかもそれぞれが人間としてプロとしての分を果たしているところ。強いけれど自然。男性の書いたこのテの小説では、どうも偏っていて「おいおい・・・」と思う点が多いのだ。そして女性作家の小説の女性主人公は、肩に力が入りすぎていて痛々しかったりする。どちらも読んでいてシンドイのだワタシは。でもコレは上手いと思う。弱さと強さのバランスが良い。スケールが大きい話なのに心理描写も細かいので読み応えがあった。