bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  わが手に雨を / グレッグ・ルッカ  

わが手に雨を

わが手に雨を

音楽誌の表紙を飾るまでになったバンドの一員であるミムは、アルコールが原因でツアーの途中一時解雇されてしまう。帰宅したミムを待ち受けていたのは、何者かによる襲撃だった。そしてネットに流された盗撮写真、かつて母を轢き殺した父の釈放、ドラッグディーラーである兄の殺害。巻き起こるスキャンダルと謎の人物からの脅迫に、ミムは自分が周到に仕掛けられた罠に堕ちた事を知る。
昼に入手して夜には読了。ひさしぶりのイッキ読みでした。主人公があまりにもオコチャマでイライラさせられるのですがそれでも一気。愛情を知らずに里親を転々とし音楽に一条の光を見出した少女(26歳ですけど)。才能があり脚光を浴び始めながらも自身のアル中問題や人間関係にもがきながら、目を逸らしていた過去を見つめなおす事によって成長していく物語、ですか。こうして書いてみると陳腐ですね。それでも見限らず応援したくなるだけの魅力を持った主人公でした。ワタクシさきほど「愛情をしらず」なんて書きましたけれど、実際は彼女、最後の里親夫婦には大変感謝しつつ愛情を感じていますし、世間的にはヤクの売人として蔑まれる兄ともよい関係を保っています。死んだ母親にも殺した父親にも複雑な愛情を持っています。あかん子ですけど悪い子じゃないんですね。整理整頓できず全てを遮断する事も出来ずもやもやした過去を抱いたまま生きている。その辺りの描き方が上手いです。あかん子のあかん子ぶりをちゃんと描けていて読ませるのです。中ほどで主人公と刑事にこんな会話をさせています。

「あたしにはみじめになる理由があるじゃない」
「そうね。だけど、自分でもそれが好きだからじゃないの」

本人がそれを自覚できたらそこからが始まり。いろんなことの。