bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  浮遊死体 / カレン・キエフスキー  

キャットは、ペイジと名乗る若い女性から仕事を依頼される。内容は、事故死したとされている自分の両親について調べてほしいというものだ。なんでも先頃亡くなった祖母フローレンスの遺産を相続するために、その娘である母ルビーの死亡を証明する必要があるのだという。しかし彼らについての書類は見つからず、それどころか彼らについて祖母は何一つ教えてくれないまま死んだのだった。現地で調査を始めたキャットだったが、亡くなったフローレンスはこの地域で権力を握っていたらしく人々の口は重い。一家の老弁護士が役に立ってくれようとしたのだがその矢先に殺されてしまう。やがてキャットの身にも危険が迫り・・・・・。
前作の「カタパルト」を紹介する際にワタクシ、『第三作』とか言ってましたゴメンナサイ。あれは第二作、この「浮遊死体」が第三作でしたですほんとゴメンナサイ。それは兎も角このシリーズ、どんどん良くなって来てる気がします。事件も複雑になり、根底に流れる何かも深くなっている気がします。前作、前々作からの登場人物が今回も出てくるのですが、彼らを通してキャットの人となりを浮き彫りにしていくかのようです。この作家は人物を描くのが上手いのでしょうね。
今回の依頼人ペイジは、愛の無い環境で育てられた大変に不安定な精神状態の女性です。調査が進むにつれ家族に纏わる秘密が徐々に明らかにされていくのですが、この「家庭の中に愛が無かった」という状況が多くの関係者に酷い影響を及ぼしている事がわかってきます。愛を知らない、それでも愛が欲しい、どんな物かはしらないけれど。それが事件を一層救いの無い物にしていくのです。ヘビーだよ。
こんなヘビーな事件の後で、最後の最後、ちょっと救われた気分になるエピソードが書かれています。まったくアルマったら素敵過ぎ。