bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  鉄槌 / ポール・リンゼイ  

鉄縋 (講談社文庫)

鉄縋 (講談社文庫)

安酒とギャンブルに溺れ、盗みにまで手を出しているぐうたらFBI捜査官キンケイド。彼の埋もれた資質を見抜き、刑務所に仕掛けられた爆発物の事件に担当として抜擢したのは新任のたたき上げ支局長ソーンだった。そしてキンケイドの相棒は、癌のために片脚を無くした黒人捜査官のオールトン。彼はまるで根性の塊り正義感の権化、デスクワークなんぞに興味は無いのだ。二人の活躍で爆弾事件は一応解決を見たかのようであったが、その奥に潜む根深い憎悪が吹き出してくる・・・・・・・・・。


やったー。ポール・リンゼイ新作出ましたー。作者は元FBI捜査官。内部のお役所的やり取りや出世至上主義、それでもどっこい踏ん張るプロ捜査官魂、みたいのが存分に味わえます。オモシロイヨ! 特にキンケイドとオールトンの、次第に育まれていく信頼とか尊敬の気持ちとかがじんじん来ます。支局長も良い。自分がFBIである事の意味を、恐らく先時代的に理解している。仕事に対するプライドの在り方、連帯感の生まれていく様子が鳥肌立つほど感じられます。読んでいると自分の仕事のプロジェクトでチームワークとか出来ていく瞬間が思い出されますよ。なんというか主要登場人物が全て機能しています。活きています。むかし読んだ漫画家入門書に書いてあった「プロファイル」が出来てるのね。この人物が何処で生まれてどう育ってどんな経験を重ねて今に至るか。そういう人間はこんな場面でどう行動するか。スタニフラフスキー・システムですね。うっかりするとヤリスギ。この作品の人物もアリガチと言えばアリガチ。すんごい解り易い見本。でもいいの。すんなり入ってきたから。ココロに。それ大事。


今、小説とか漫画とか書こうとしている人は、人物造詣にもうちょっと気を使った方がいいよ。必然性て知ってるかい。ソコを押さえていれば、それこそ「登場人物が勝手に動き出して・・・・」てなるんですよ。先に台詞ありきじゃ無いの。実際の原稿に書き出されるとは限らないんだけど、「この人物は如何にしてこの人物に成ったか」は重要なの。おーけー?