アムステルダム / イアン・マキューアン
- 作者: イアン・マキューアン,小山太一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/07/28
- メディア: 文庫
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やがて彼らは、モリーの遺した一連の写真によって過酷な運命に巻き込まれていく。
約200ページのわりと短い小説*1。しかし、このなかには不倫、アルツハイマー、特殊な趣味、暴露記事、ヤラセ、安楽死、等と言った現代社会を象徴するようなキーワードがちりばめられている。極悪人は出てこない。皆ほとんど善人。ほとんど。しかしそんな彼らの心の隙間に『何か』が巣食う時、悪意の歯車が回り始める。それは誰もが持っている『信念』とか『プライド』とかそんなものの変形したもの。ものすごく身近に狂気の芽は在って、思い出だの愛だの信頼だのを切り裂いていく。短いけれど、鋭く痛い、苦い、そんな小説だった。