bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  王は闇に眠る / フランシーヌ・マシューズ  

王は闇に眠る〈上〉 (新潮文庫) 王は闇に眠る〈下〉 (新潮文庫)
1945年、OSSの命を受けたジャック・ロデリックは終戦直後のバンコクに降り立つ。その後、タイシルクを一大産業に育て上げた彼は1967年、マレーシアの高原で失踪した。30年余りの後、ジャックの孫マックスはタイに遺産の返還を要求する。真相の究明はリスクマネジメント会社調査員のステファニー・フォッグの手に委ねられた・・・・・・・。
と、まあ上記はほぼ上巻裏表紙に印刷された粗筋の丸写しです。実際は全体像を噛み砕いて説明するのが大変なほどに盛り沢山で、ちょっと詰め込みすぎではないかとさえ思ってしまいました。終戦直後から始まるジャックの時代、泥沼化するベトナム戦争に絡め取られたジャックの息子ローリーの時代、そして孫のマックスとステファニーの現代を行ったり来たりする形で綴られているのは、西洋人から見たミステリアスな東洋の姿かもしれません。ストーリー自体よりも、その矛盾に満ちた掴み所の無いタイの描写に翻弄されたような気がしました。
この小説は、タイシルク王と謳われたジム・トンプソンの物語を下敷きに書かれています。終戦直後のバンコクOSS支局長として乗り込み、タイの復興に尽力し、絹織物を世界に誇る一大産業に育て上げながら突然失踪したトンプソンの物語は、政治的陰謀説、身代金目当ての誘拐説、CIAによる暗殺説など、謎が謎を呼ぶ未解決のミステリーとして今なお語り継がれています。
で、えー、私の感想としては、面白かったけど草臥れた、と。この作品の中で一番魅力的だったのはジャックでもステファニーでもなく、ステファニーの上司(?)オリヴァー・クレインでしたね。オリヴァー、この喰えない奴!