bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

 城壁に手をかけた男 上/下 / ブライアン・フリーマントル 


城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)
ミサイル防衛条約に調印するためロシアを訪問した合衆国大統領夫妻が、ロシア大統領夫妻とともに銃撃される。実行犯として捕らえられたのは、亡命イギリス人の息子だった。英米露三国で合同捜査が開始され、例によってチャーリーに英国側担当窓口のお鉢が廻ってきた。入り乱れる各国捜査陣の思惑。捜査が進むにつれ周到に張り巡らされた陰謀があらわになって行く・・・・・・。
ゴールデンウィークに買って、一旦はよみはじめたのですが長らく中断していました。
理由はこのシリーズ独特の サバイバル合戦に踏み込みたくなかったからなのです。007映画などにはあまり出て来ませんが、フリーマントルの描く諜報の世界・政治の世界で生き残るためにやり取りされる心理戦は、読んでいるこちらをも消耗させます。それが面白いんだけどね。責任は相手に(他者に、或いは他国に)おっ被せ、自分の立場を守り、少しでも優位に立つ。その道のプロたちがしのぎを削る、えがつないほどの攻防戦ですよ。もちろん『つねに生き延びる男』チャーリーのシリーズですから、大船に乗った気持ちで楽しめば良いのでしょうが、そうさせないのが作者の腕の見せ所ですよね。今回もこめかみが痛くなるほど翻弄されましたよ。胃がきりきりしましたよ。でも今までよりは控えめだったかな。主人公であるチャーリーの立場が比較的安定しているのです。肉体的にも社会的にも危機感が薄いのです。諜報小説というよりはもはや警察小説に近い本作なのです。安物のスーツとヨレヨレのハッシュハピーを身に着けた風采の上がらない男、本国でも赴任先の大使館でもうだつの上がらない余計者として見くびられている男、でもその実態は・・・・っていう水戸黄門的な鮮やかさは本作にはありません。それを期待していた私はちょっと残念だったかな。そうは言ってもチャーリーはチャーリー、最後には彼らしいやり方で事件に幕を引いてくれます。あー、すっきり。プライベート以外は、な。
それにしてもこういうのを読むと、テレビで喋ってるニッポン国の政治家たちが幼稚にみえますね。子供のけんかみたいです。もっと一言一言を計算して喋ってくんないかにゃー?