bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  デッド・エンド / カレン・キエフスキー  

大手医療機器メーカーに勤めるアマンダは、自社製品である人工心臓弁に欠陥があり、重大な事故が起こっている事を知る。しかし会社はそれを公にせず示談金で片を付けているのだった。アマンダは政府機関や監視団体にうったえかけ、ついには犠牲者の遺族にまで働きかけるのだが、会社側から悪質な嫌がらせを受け始める。見かねた夫にアマンダの保護を依頼されたキャット。彼女が見たのは正義の使命に燃るアマンダの姿と、それにつれてエスカレートしていく嫌がらせの数々だった。そして或る日、屋外スパで感電死しているアマンダが発見される・・・・・・・。
欠陥商品による事故の隠匿、内部告発、近頃も世間を騒がせている話題です。本書にも出てくるのですが、実に多くの事例があるのですね。それでも表に出てくるのは氷山の一角に過ぎません。まだまだマスコミ(残念ながら私たちが知るのはマスコミ経由でしょう。当事者で無い限り)の掴んでいないものが沢山あるはずなのです。そのひとつを内部告発しようとするのが今回アマンダなわけですが、彼女の「自分は正しい事をしているのだ」という熱意は恐いくらいです。たしかにそうなんだけど、現実は複雑で、時に残酷にさえ思えます。じゃあ一体誰がどうすれば良いのよーって叫びたくなります。そんな作品でした。
さて、今までに無く社会派な今作ですが、以外に身近な感じの仕上がりでした。キャットが事件の渦中に飛び込む形で進行するせいでしょうか。アマンダもその夫も欠陥商品の犠牲者も、嫌がらせ(つか、脅迫)する人間達さえも、それぞれの人生を抱えて生きている事が伝わってきました。この作者うまいですよやっぱ。そうは言ってもキャットはスーパーウーマン化してきてるのが(前作ほどではないですが)ちょっと気になる。次作はどうなのかしらん。て、この先は翻訳されてないみたいなのですが。おーーいベネッセさーん!