bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  荊の城 / サラ・ウォーターズ  

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

ロンドンの下町でスリとして生きてきた少女スゥ。あるとき顔見知りの詐欺師に仕事を持ちかけられる。辺鄙な田舎の城に住んでいる令嬢をたぶらかして、財産を奪い取ろうと言うのだ。スゥの役割はその令嬢の侍女だ。迷いつつも仕事を引き受け、城に潜入したスゥ。俗世間から隔絶した小さな世界で、スゥは徐々に令嬢モードと親しくなっていく。しかしその背後では冷酷な計画が進行していくのだった。
前作「半身」をイマイチ楽しめなかったワタクシなので、上下巻に分かれたこの長編を手に取るのは正直不安でした。が、すごかった。これはミステリ?冒険小説?良くわかりません。ただただ凄い。上巻を読み終えたときに考えたのは、「半身」だったらここで終わってたなあって事でした。でも下巻が在るのです。続きが。この作品には前作以上のスピード感充実感があります。これはきっと主人公のスゥとモードの強さのせいでしょう。逞しいです。時代的な背景もあり、かなり暗く陰惨な描写が続くのですが(いや奥さん、酷い話でっせー)そんな中をどう生き抜くか、それがテーマなのではとすら思えてきます。一般受けはしなさげな小説ですが、このミス一位なのですねえ。ちょっと意外です。だってワタクシ、この小説を(この凄い小説を!)誰に勧めてよいか解りません。たとえば実家のママ上などには勧めにくいよコレ。相手を選ぶ小説なんじゃないかなあ。