bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  獣たちの庭園 / ジェフリー・ディーヴァー  


獣たちの庭園 (文春文庫)

獣たちの庭園 (文春文庫)


ギャングの下請け殺し屋ポール。プロとして数々の仕事をこなしてきた彼だが、ついに罠に嵌り或る場所に連行された。そこで待っていたのはギャングではなくなんと海軍情報部と上院議員そして大実業家。彼らはポールに、「仕事」をもちかけるのだった。報酬は大金と真っ白な新しい人生、断れば即当局に引き渡され電気椅子
時は1936年、オリンピック開催に沸くベルリンに、ナチス高官暗殺の使命を帯びた一人の殺し屋が潜入する・・・・・・。



さすがジェフリー・ディーバー、歴史サスペンスを書かせても一流のページターナーです。
史実をふまえた上に虚構を埋め込んだ本作は、びっくりするほど冒険小説でした。後書きに書かれている通り、ディーバーには珍しく心身ともにタフなヒーローが出てくるんですよ奥さん。もちろん他の登場人物も魅力的です。ストーリー進行のあちこちで偶然が多い気がするのはご愛嬌かな。読み終えてみれば、主人公がドイツに渡ってからほんの2日間程の出来事だったのにはびっくり。充実してたというか、詰め込まれてたというか、まあいいか(大甘)。
主な舞台となるドイツでは、お上も庶民もファシズムに侵されつつあるのですが、中にはその状況を異常だと感じている人々がいて、それぞれに悩んだり行動したりしているのです。その逆に米国内でもナチスに同調している人、利用しようとしている人が居るのですけれど。
さて、作中の時代から70年近く経った現在では、当然この後の世界の動きはわかっているわけですが、それでもポールのような人が、コール警視のような人が、或いはオットーのような人がいたかもしれないと思わせてしまう、そんな作品でした。