bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  暗く聖なる夜 / マイクル・コナリー  

暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)

暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)


刑事を早期退職し私立探偵となったハリー・ボッシュは、刑事時代に未解決のまま心残りとなっている事件ファイルを見返す日々を送っていた。ある時そんな事件のひとつについて電話が入る。相手は当時ボッシュ達から事件を引き継いだ男、今では全身不随となり引退した元刑事クロスだった。「ハリー、アンジェラ・ベントンのことを思い浮かべることはあるか?」
4年前の殺人事件、そしてその捜査中に、被害者女性の勤め先であった映画会社のロケ現場で強奪された200万ドル・・・・・・。クロスからの電話をきっかけに独自の捜査を開始するボッシュ。しかし、バッジを持たない一市民となった彼は、市警やFBIから協力を拒まれるばかりか、激しい圧力や妨害を受ける事になる。この世間的には忘れられた事件の裏に、いったい何が隠されているのだろうか。


退職したとは言えあまりにも孤独な戦いを強いられるボッシュ。協力を拒むかつての仲間達、9・11以降少々狂っているかのようなFBI、別れてもなお愛し続ける元妻エレノア。それでも彼は自分の使命を果たそうと一人走る。このシリーズを通してのテーマとも言えるのがボッシュの自分探し(て、陳腐な言葉ですかー)なのだけれど、今回彼は、組織を離れることによって、よりいっそう自分は何者なのか、何をすべきなのかを自分に問いかける事になります。迷宮入りだった事件を洗い直し始めると、あちこちから妨害が入り、当初予想された以上に複雑な事情がからみあっていました。その縺れた糸を必死に解き進むうちに、隠されていた人々の心の闇が浮かび上がってきます。開けてはいけない箱を、それでも開けなければならないのは、このテの小説のお約束ですが、ボッシュの場合は特に宿命的に感じさせられます。つまりそれが「何者なのか、何をすべきなのか」の答えなのでしょう。今作では最後に、そこにもうひとつの答えを付け加える事になるかもしれない出来事が提示されます。早く次を読みたい!この先に待ち受けるものを見たいと思わせるエンディングでした。