bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  神の手 / パトリシア・コーンウェル  

神の手 (上) (講談社文庫)

神の手 (上) (講談社文庫)

神の手 (下) (講談社文庫)

神の手 (下) (講談社文庫)


読了。 


毎回人間心理のダークな部分をこれでもか!と見せ付けてくれるコーンウェルなのだけれど、今回は最高?最悪?なんと言えば良いのかわからない。スカーペッタひとりに絞らず視点を切り替えていく事で、映画のようなスピード感を作っているようでもあるけれど、散漫になって読み手が置いて行かれたような気分にもなる。一気読みだったけれど、例によって血なまぐさい強烈な描写の連続なのだけれど、何故か入り込めず醒めた気分で読み終えた。
後書きによれば、作者の狙いは「脅迫的殺人者の心の動きを探り、なぜ殺さずにいられないのかを描く事」だそうな。きっとそれはこの作品だけでは描ききれていないし、作者も描ききれたとは思っていないのではないかしら。ああ、それが答えか。全てが解明できるわけではないよ、と。
なんというか、益々しんどくなってきた。レギュラーメンバー全てが問題を抱えていて、関係がギクシャクしている。皆が自分の抱えている問題で一杯一杯で余裕が無いことに加えて、ある人物が仕組んだ罠にまんまと嵌ってしまっていて、かつての信頼関係が嘘のような疑心暗鬼。そこに謎めいた殺人事件や失踪事件が絡まってくる。
殺人犯も恐いけれど、そうでない登場人物の心の闇がいちいち恐い。自分の立場を守り、優位に立ちたいもっと高く評価されたいという、誰にでもある気持ちから産まれる行為がエスカレートしていくのが。


と、まあ、この本を読んだら今のワタクシにはヘビー過ぎて、前に読んだ本はみんな吹っ飛んだですよ。とか何とか言い訳をしてみる。えーと何を読んだんだったかな。