bullet proof soul / side-B

じつは防弾仕様になっておりません

  トゥモローワールド / アルフォンソ・キュアロン  


原作を読まずに観ました。P・D・ジェイムスは好きなのに何故読んでいないかというと、SFだっていうからー。でも映画は観ました。観た人の感想があまりに賛否両論なので興味を惹かれたのもあります。また、映画の場合、わが想像力の不足を映像が補ってくれるせいか、入り込みやすいと思いましたし。
で、軽い気持ちでサービスデーに観た訳です。
そしてものすごく重い気持ちで帰ってきたのでした。すごい映画だった。
舞台が近未来であるところ、そして18年子供が生まれていないという設定は、確かにSFなのだろうけれど、そんなことは気にならないほど現実的。絶望。荒廃。暴力。子供が生まれない理由も、ヒューマンプロジェクトなる存在の姿も、エンディングの先にあるものも、あきらかにはされていないけれど、それなのに酷くリアル。目を背けたくなるような出来事が淡々と続く毎日の描写。まるでドキュメンタリーのよう。約20年後となれば、ワタシは主人公と彼の友人ジャスパーの間の世代か。絶望しかない世界でいつ死ぬのも自由(自殺は公認)だけれど、死に時は選びたい。皆それだけを支えにしているよう。テロリストも含め、それだけが人間らしさ。犬や猫をはじめ多くの動物が画面に映されるのは、子供代わりであったり生命の象徴であったりするのか考えすぎか。先にも書いたけれど、この映画は多くの謎を丸投げで終わります。観客がそれを自分のなかにあるもので理由付け埋め合わせる映画です。それが賛否両論の理由でもあるのでしょうね。この映画が好きか嫌いかと問われたら嫌いだと答えますよ。楽しい映画が好きなんです。でもこれは別格。すごい映画。地味だけど。ものすごビッグバジェットらしいけど地味。わざとそうしてるのね。ゆめゆめしい美男美女も使わず(ファンの方ゴメンナサイ)今の日常の延長線上にある世界と。それは成功してると思います。大ヒットはしなさげだけどね。