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じつは防弾仕様になっておりません

  シャーロック・ホームズの息子 / ブライアン・フリーマントル  

シャーロック・ホームズの息子〈上〉 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの息子〈上〉 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの息子〈下〉 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの息子〈下〉 (新潮文庫)

時は第一次大戦直前。セバスチャンはシャーロック・ホームズの実子ながら伯父マイクロフトの息子として育てられた。ケンブリッジ、ソルボンヌ、ハイデルベルグを優秀な成績で卒業し英国へと戻ってきた彼は、時の海軍大臣チャーチルの要請を受け、青年実業家を装い単身アメリカへと潜入することになる。アメリカは中立国なのだが、ドイツと手を組んで莫大な利益を得ようとする秘密結社があるらしいのだ。それを秘密裏に探るのがセバスチャンの任務なのだが、これはチャーチル独自の捜査であり、英国政府からの援助は一切無し。もしもの時にも英国政府との関係は認められない孤立無援の捜査である。
アメリカへ向かったセバスチャンは、鉄鋼王や銀行家、オーストリアのプリンセス、ロシアの皇子等と接触。在米ドイツ総連を調べていた下院議員と新聞記者が謎の死を遂げていたことから、ドイツ大使館の面々やドイツへの密輸集団を追う事にした矢先、ドイツ大使館のレセプションで、近々謎の積荷が英国経由でドイツに向かう事を掴む。しかし、駐米ドイツ大使ベルンシュトフをはじめドイツ関係者がセバスチャンに目をつけ始めていた。


フリーマントルがホームズ・パスティーシュを書いた」っていうわけで、探偵小説というよりはスパイ小説なのです。セバスチャンは実の父ホームズから探偵調査のノウハウを教えられているのですが、今回はチャーチルの命を受けた潜入捜査なのですよ。「当方は一切関知しない」方式で、まったくチャーチルの狡猾な政治家っぷりが見事です。作者はチャーチルさん嫌いなのかね。
ただねえ、この作品単品だととても中途半端。事件はまだ始まったばかりのところで終わってます。登場人物が沢山顔出ししていますが、重要に見えた人物も途中でドロップアウト。これは物語を賑やかにするためではなく次回作への伏線ですか。また、ここに至る前振りが必要でしょう普通。作中あちこちで一応説明されてはいるのですが、セバスチャンの生い立ちや、シャーロックが実の父であると名乗りを上げるシーン、セバスチャンが事実を受け入れ、探偵術を学ぶシーンなどは一つの作品になるはずなんだけれど。それを書かないのは何故。ありがちなものになると判断したのかしら。微妙な父子の確執も残っているし、シャーロックもまだ耄碌してはいない。シリーズ化が決定し次回作が既に書かれているそうなので、徐々に織り込んで描いていく予定なのでしょう。
うーん、困った。面白くないわけではないのですが。シリーズ続けて読んでいけばもっと面白くなるかもなのですが。ううーん。