魔術師の夜 / キャロル・オコンネル
- 作者: キャロル・オコンネル,務台夏子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2005/12/27
- メディア: 文庫
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彼らが共に過ごした戦時中のパリに何か秘密が隠されているのか。彼らはそこで出会い、青春を過ごし、マラカイの妻ルイーザが死んだ。そして彼らは散り散りになった。おそらく、今もルイーザの幻影をパートナーとして連れ歩くマラカイの狂気の秘密も、そこにある。
過去を共有する老マジシャン達と、数々の死のトリックに翻弄されながら、マロリーは孤独に謎を追う・・・・・・・。シリーズ第5弾。
「友達になりたい探偵」という帯を巻いた本も世の中にはありますが、絶対に友達になれない刑事、それがマロリー。彼女はニューヨークで最も美しく、そして最も冷徹。感情も無ければ感傷も無い、まさに氷の天使。そのマロリーが前作『天使の帰郷』で、母の死と自らの過去に区切りを付けての今作となったわけです。そしてシリーズ開始当初から影の重要人物だったマックス・キャンドルとマラカイ(&ルイーザ)、そして彼らの弟子のような存在チャールズによって、このシリーズはマジックの匂いを漂わせて来ましたが、今回はそれらの総決算のような作品となったようです。さて、マロリーに変化はあったのか。うむむむ、以前より感情の揺れがあるかしら。自分なりの正義に基づいて孤軍奮闘するのは今まで通りなのだけれど、敵味方の線引きをする瞬間や、他者と接する度に優位に立とうとし、それが叶わなかった時などに、怒りだけでは無く傷ついた少女の顔がちらりと垣間見えるような気がしました。今までの作品でもあるにはあったのだけれど、今回は特に孤独への恐怖のようなものが描きこまれていたように思うのですが、どうでしょうか。もしこの読みが間違っていなければ、次回作ではもっと変わっていくと思うのですが、どうかしら。
そ言えば先日、マジックの歴史みたいな番組を観たのでした。ちょうどこの本を読んだばかりの頃です。チャン・リン・スーなる中国人(実はアメリカ人が化けていた)マジシャンの弾丸受け止めマジック失敗死とか、ゴールデンとセルビットが「胴体切断はオレが考えたんだ!」「いやオレが先にやったんだ!」で争ったとか、プロフェッサーと呼ばれ多くのマジシャンから師と仰がれるダイ・バーノンの名言「Be Natural」だとか、大変面白く、また小説世界をイメージする参考になりましたよ。